更新をずいぶんサボっていました。
 一度更新の間隔が空くと、再開するのは結構エネルギーがいりますね。

 このブログ「書評」と銘打ってやってきました。1エントリ当たりの文章も長かったのですが、それは書く以上ちゃんと書評をせねば、と思っていたからでした。しかい考えをまとめて文章に残すのは結構大変なのですよね。それでつい億劫になってしまっていたのでした。

 しかし、ある本を読んでこんな文章に出会いました。

「私がブログを初めて触ったのは2003年の夏ですが、実は当時は何度もブログを作っては飽きて、作っては更新停止と挫折を繰り返していました。
 (中略)ブログは記事や論文のように一つ一つのエントリーを完成品として書くと、簡単に息切れするものだと感じています。ブログを書くというと、どうしても『情報発信』のイメージがあるので、最初の頃はついつい何か他の人に感心されること、他の人が知らないことを書いてやろうと肩肘をはってしまうのですが。
 そもそも、ブログやインターネットでは日本中の人たちがつながっているわけで、当然、その中には自分より詳しい人や、その分野の専門家がたくさんいます。
 そんな中、他の人が知らないことを発信できる人なんて、そもそもそんなにいないわけです。
 そういう意味では、誰かと会話している間隔で、誰かにメールをしている感覚で、思ったままのことを自分のメモとして書く。そんな風にブログを使うのが良いのではないかと思っています。」(p62-63)


 そうなんですよね。まさに自分のことを言われた気がしました。
 そこで、そんなに肩に力を入れないで、もうちょっと軽い気持ちで書いてみようと思って、このブログも再開したわけです。

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 さて、久々に紹介する本は、上で紹介した文章が載っていた本です。巷で話題の「クチコミ」をテーマにした本になります。

 ちなみに、上記の文章は文中の「ブロガーの本音」と題されたコラムにあったもので、「ネットコミュニケーションの視点」というブログを書かれている徳力基彦さんのコメントでした。

 本の内容ですが、いわゆる「アルファーブロガー」と呼ばれている人が自ら、自分の思うところを書いた、というものです。著者コグレマサト氏、いしたにまさき氏はそれぞれ、「ネタフル」「みたいもん」というブログの主催者です。

 「アルファーブロガー」というのは、Wikipediaによると、「ブロガーの中でも特に議題設定効果が高く、他のブログへの影響力の強いブログの書き手を指す」、だそうです。単にアクセス数が多いだけではダメで(タレントブログの書き手はアルファーブロガーとは呼ばないそうです)、他者への影響力の高さを持っていることが特徴といえましょう。多くのブロガーの中でこの域に達する人はほんの一握りであり、一種の成功者だともいえます。
 彼らの視点から、ネットの中で消費者の「クチコミ」を喚起させ、効果的にマーケティング活動をやってための、いくつかのやり方がまとめてあります。

 ただ、私の感想としては正直あまりピンとはきませんでした。いろいろ取りとめもなく書いてあるのですが、要は、企業(またはビジネスパーソン)に「ブログを開設して、クチコミが広がるように程よいネタを提供して、消費者との双方向のやりとりを含めたコミュニケーション活動をしていきましょう」と言っているように感じましたが、こういう話は決して新しい提案ではないし、既に多くの企業が実践しているものです。むしろ、やってはみたけど思うようにいかない、あるいは結果がでなくてどうしたらいいんだろうと思っているような担当者が多いのが現実のような気がします。
 むしろそんな人へのアドバイス的なことがあるとよかったのかもしれません。

 例えば、著者は成功の秘訣として「継続」や「書きたくなる話題(ネタ)の提供」を述べていますが、企業にとってブログが成長するまでの時間を待てないケースも多く、またネタの提供といっても「そんなのあったら苦労しないよ〜(苦笑)」というところが多いでしょう。そういう人にはほとんど何の参考にもなりません。

 そもそも、「クチコミの技術」と題されているのに、書いてあるのはブログの話だけ。これもかなりおかしいと思います。ブログのクチコミ(CGM)が話題になっているのは承知していますが、クチコミはやはりほとんどがFace to Faceで起こるものです。そこへの目配せがない本を「クチコミの技術」と題するのは、はっきり言って針小棒大です。

 彼ら、つまりブログを大きくして「アルファーブロガー」を目指す人には参考になるかも知れませんが、企業で「クチコミ」をマーケティングに取り入れたいと考えている人には、意外と肩透かしを食らう内容だ、というのが私の意見です。

 もっとも、この本の中の小ネタ(ブログの測定技術など)などは参考になりました。だから、決して読む価値がない本だとは思いませんが。

☆コグレマサト+いしたにまさき「クチコミの技術」(2007年)日経BP社


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