ちょっと前に読んだ本ですが紹介します。
今回はインターネット広告の「メディアプラン(プランニングとその効果)」がテーマです。
私が広告会社に入社した頃は、まだインターネットを知っている人は極少数で、屋外広告などもSP扱いでしたから、「広告」といえばイコール4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)を指していました。
その「広告」の領域にはメディアプランという考え方があります。それは広告を効果的・効率的に出稿するためにどうすべきか? ということに関するプランニングです。主に定量的な視点からこの課題にアプローチします。
この「メディアプラン」の視点は昔からあったものでありますが、日本では90年代の不況期にとても脚光を浴びました。なぜなら広告主の間で、限られた広告予算をより効率的に使いたい、というニーズが大変高まったからでした。大手広告代理店各社はそのニーズに対応すべく、例えば「オプティマイザー」と呼ばれるような、より効果の高いメディアプランを作成するコンピューターシステムを開発したりしました。
今日の広告業界で、電通、博報堂(HDY)、ADKの上位3社へのメディア扱いの集中が進んでいます。上位社へ集中が進んだのは、彼らがこの時期メディアプランのシステムを開発し、クライアントの「効率化」のニーズに応える存在になり得たということが、大きな背景としてあると思います。
今日インターネット広告市場が急成長しているわけですが、この領域でも、効果的・効率的なプランニングは当然求められます。そしてこのニーズに応え得る広告会社がやはりクライアントからの信頼を勝ち得て生き残って行くのだろうと思います。
また、インターネット広告はマス広告と異なり、広告テクノロジー進化の影響を受けて、年々複雑・多様化し、新たなサービスがどんどん生まれきている状況です。つい数年前まではインターネット広告といえば「バナー広告」でした。しかし今やリスティング広告、コンテンツ連動広告、アフィリエイトなど新しいタイプの広告がたくさん生まれ、それぞれが急激に成長しています。広告メニューではないものの、「行動ターゲッティング」のような技術を使って、よりカスタマイズした形で広告をターゲットに届ける技術が開発されたりもしています。
だから、インターネット広告におけるメディアプランと言っても、単純にCTRなどのデータを比較して効率良い順に並べて終わり、ということではなく、それぞれの広告メニューの癖を理解したり、組み合わを工夫するなど、マスメディアとは違ったそれなりの深いスキル開発が求められるのだと思います。
今回紹介する2冊の本は共に、「インターネット広告専業代理店」といわれる会社によるものです。そして共に、インターネット広告の概要説明とともに、効果的なプランニングの考え方・事例などが紹介されています。この2冊を読むと彼らが単に広告の取次ぎをしているのではなく、求められる「効率・効果」という課題に正面から向き合い、答えを出そうとしているのが感じられます。
一つはインターネット広告代理店2位の「オプト」による「インターネット広告による売上革新」。もう一つが同じくインターネット広告代理店3位の「セプティーニ」佐藤社長による「Web2.0時代のインターネット広告」です。
それぞれの本は、それぞれの会社の得意領域を反映してか、内容は重なりながらも、重点を置いて説明している分野に若干違いがあり、そこに特色があるような感じがします。いずれにしても、現在のインターネット広告の概要と事例を手際よく紹介したもので、この領域に関心のある人にとっては入門書・概論書として参考になるはずです。
この2冊から、特に私が面白いと思った中身をいくつか紹介します。
◆ブロードリーチ効果の間接効果(「インターネット広告による売上げ革新」より)
ブロードリーチというのは、「特定の属性や趣味嗜好等にセグメントすることなく、幅広いユーザーに訴求できる広告」(p119)で、ヤフーやMSNのトップページの大きいバナー広告などがそれにあたります。このタイプの広告はテレビCMのようにリーチが稼げて、ブランドイメージを伝達する効果もあるとされていますが、ターゲットを絞らないためCTR(クリックスルーレート)は必ずしもよくない、割高な広告とされます。しかしこの本の指摘によると、実はこのタイプの広告の効果は掲載終了後も引き続き持続するので、出稿後の一定の期間まで考えると、効率が意外と良いのだというのです。
「出稿期間中の1週間で、クリックが6万クリック、申し込み数が330件(中略)という結果だった。(中略)ただし、注目すべき点は、1週間の掲載期間終了後、その後2ヵ月にわたり掲載期間中にバナーをクリックしたユーザーからの申し込みが発生し続け、合計200件の申し込みが掲載終了後に積みあがった点である。いわゆる『流れ込み効果』である。」(p124-125)
とても興味深い面白い指摘です。
◆リスティング広告のプランニング(「インターネット広告による売上げ革新」より)
この本の最後の方には、リスティング広告(検索連動広告)の運用事例がでています。広告額が小さい割りに大きな手間がかかりとても大変だという印象があるリスティング広告の管理ですが、ここでは戦略的な入札キーワード選択や広告タイトル・説明文の書き方の事例が紹介されています。私自身は普段あまりこの領域の仕事はしていないのですが、“こんなに戦略性があるのか!”と興味深く読ませてもらいました。
◆アフィリエイトの活用(「Web2.0時代のインターネット広告」)
アフィリエイト広告(成果報酬型広告)の仕組みもわかりづらいのですが、広告(プロモーション)媒体として活用するやり方がシンプルに解説がされています。
しかしいずれにせよ、設立されてまだ10年程度しか経過していないネット広告会社が、ここまでネット広告の可能性や使い方についてまとめた本を出すというのは、なんだか感慨深い気がしますし、彼らの実力や将来性を感じてしまいます。
☆株式会社オプト、ETIM研究所編「インターネット広告による売上げ革新」(2006年)同文館出版
インターネット広告による売上革新
☆佐藤光紀著「Web2.0時代のインターネット広告」(2006年)日本経済新聞社
Web2.0時代のインターネット広告―そのしくみから導入まで
今回はインターネット広告の「メディアプラン(プランニングとその効果)」がテーマです。
私が広告会社に入社した頃は、まだインターネットを知っている人は極少数で、屋外広告などもSP扱いでしたから、「広告」といえばイコール4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)を指していました。
その「広告」の領域にはメディアプランという考え方があります。それは広告を効果的・効率的に出稿するためにどうすべきか? ということに関するプランニングです。主に定量的な視点からこの課題にアプローチします。
この「メディアプラン」の視点は昔からあったものでありますが、日本では90年代の不況期にとても脚光を浴びました。なぜなら広告主の間で、限られた広告予算をより効率的に使いたい、というニーズが大変高まったからでした。大手広告代理店各社はそのニーズに対応すべく、例えば「オプティマイザー」と呼ばれるような、より効果の高いメディアプランを作成するコンピューターシステムを開発したりしました。
今日の広告業界で、電通、博報堂(HDY)、ADKの上位3社へのメディア扱いの集中が進んでいます。上位社へ集中が進んだのは、彼らがこの時期メディアプランのシステムを開発し、クライアントの「効率化」のニーズに応える存在になり得たということが、大きな背景としてあると思います。
今日インターネット広告市場が急成長しているわけですが、この領域でも、効果的・効率的なプランニングは当然求められます。そしてこのニーズに応え得る広告会社がやはりクライアントからの信頼を勝ち得て生き残って行くのだろうと思います。
また、インターネット広告はマス広告と異なり、広告テクノロジー進化の影響を受けて、年々複雑・多様化し、新たなサービスがどんどん生まれきている状況です。つい数年前まではインターネット広告といえば「バナー広告」でした。しかし今やリスティング広告、コンテンツ連動広告、アフィリエイトなど新しいタイプの広告がたくさん生まれ、それぞれが急激に成長しています。広告メニューではないものの、「行動ターゲッティング」のような技術を使って、よりカスタマイズした形で広告をターゲットに届ける技術が開発されたりもしています。
だから、インターネット広告におけるメディアプランと言っても、単純にCTRなどのデータを比較して効率良い順に並べて終わり、ということではなく、それぞれの広告メニューの癖を理解したり、組み合わを工夫するなど、マスメディアとは違ったそれなりの深いスキル開発が求められるのだと思います。
今回紹介する2冊の本は共に、「インターネット広告専業代理店」といわれる会社によるものです。そして共に、インターネット広告の概要説明とともに、効果的なプランニングの考え方・事例などが紹介されています。この2冊を読むと彼らが単に広告の取次ぎをしているのではなく、求められる「効率・効果」という課題に正面から向き合い、答えを出そうとしているのが感じられます。
一つはインターネット広告代理店2位の「オプト」による「インターネット広告による売上革新」。もう一つが同じくインターネット広告代理店3位の「セプティーニ」佐藤社長による「Web2.0時代のインターネット広告」です。
それぞれの本は、それぞれの会社の得意領域を反映してか、内容は重なりながらも、重点を置いて説明している分野に若干違いがあり、そこに特色があるような感じがします。いずれにしても、現在のインターネット広告の概要と事例を手際よく紹介したもので、この領域に関心のある人にとっては入門書・概論書として参考になるはずです。
この2冊から、特に私が面白いと思った中身をいくつか紹介します。
◆ブロードリーチ効果の間接効果(「インターネット広告による売上げ革新」より)
ブロードリーチというのは、「特定の属性や趣味嗜好等にセグメントすることなく、幅広いユーザーに訴求できる広告」(p119)で、ヤフーやMSNのトップページの大きいバナー広告などがそれにあたります。このタイプの広告はテレビCMのようにリーチが稼げて、ブランドイメージを伝達する効果もあるとされていますが、ターゲットを絞らないためCTR(クリックスルーレート)は必ずしもよくない、割高な広告とされます。しかしこの本の指摘によると、実はこのタイプの広告の効果は掲載終了後も引き続き持続するので、出稿後の一定の期間まで考えると、効率が意外と良いのだというのです。
「出稿期間中の1週間で、クリックが6万クリック、申し込み数が330件(中略)という結果だった。(中略)ただし、注目すべき点は、1週間の掲載期間終了後、その後2ヵ月にわたり掲載期間中にバナーをクリックしたユーザーからの申し込みが発生し続け、合計200件の申し込みが掲載終了後に積みあがった点である。いわゆる『流れ込み効果』である。」(p124-125)
とても興味深い面白い指摘です。
◆リスティング広告のプランニング(「インターネット広告による売上げ革新」より)
この本の最後の方には、リスティング広告(検索連動広告)の運用事例がでています。広告額が小さい割りに大きな手間がかかりとても大変だという印象があるリスティング広告の管理ですが、ここでは戦略的な入札キーワード選択や広告タイトル・説明文の書き方の事例が紹介されています。私自身は普段あまりこの領域の仕事はしていないのですが、“こんなに戦略性があるのか!”と興味深く読ませてもらいました。
◆アフィリエイトの活用(「Web2.0時代のインターネット広告」)
アフィリエイト広告(成果報酬型広告)の仕組みもわかりづらいのですが、広告(プロモーション)媒体として活用するやり方がシンプルに解説がされています。
しかしいずれにせよ、設立されてまだ10年程度しか経過していないネット広告会社が、ここまでネット広告の可能性や使い方についてまとめた本を出すというのは、なんだか感慨深い気がしますし、彼らの実力や将来性を感じてしまいます。
☆株式会社オプト、ETIM研究所編「インターネット広告による売上げ革新」(2006年)同文館出版
インターネット広告による売上革新
☆佐藤光紀著「Web2.0時代のインターネット広告」(2006年)日本経済新聞社
Web2.0時代のインターネット広告―そのしくみから導入まで