まただいぶ間が空いてしまいました。更新しない間でも、特にWEB関係の技術やサービスはどんどん進んでいく感じがしますね。例えばこのブログでもしばしば話題にしている「放送と通信の融合」問題でも、政府はインターネット通信(IP放送)を地上デジタル放送などと同時放送に限って著作権フリーにするという方向で動き出したようです(読売新聞5月31日)。小さな一歩でありますが、これらのことが積み重なって複雑な問題が解かれていくのだと思います。
さて、今回もWEB2.0がらみの本を取り上げます。「WEB2.0」も専門家だけではなく、普通のビジネスマンの日常会話の範囲に入ってきたようです。最近もエコノミストで比較的まとまった特集が組まれていました。
その中でも「RSS(RSSマーケティング)」に関する本を今回紹介します。
「RSS」という言葉も、最近急に市民権を得た感じです。「半年ぐらい前は聞いたことあるくらいで何のことかさっぱりわからなかったけど、今は何となくわかる」 ...そう感じる人も多いのではないでしょうか。
しかし、それでも「RSSマーケティング」というのはかなりニッチな感じがします。RSS自体がWEBコミュニケーションのツールとしてようやく普及し始めた段階なのに、もうマーケティングの道具、つまり金儲けの道具に使おうというのですから、ちょっと前のめりな感じがしないでもないですが、野心的な取り組みであることは間違いありません。
それでもこの本を読むと確かにRSSの可能性に気づかされます(あくまでWEBコミュニケーションのツールとしての可能性で、マーケティングツールとしての直接的な可能性ではありませんが...)。
1.RSSの意義
「1990年代後半からのインターネットの発展によって、私は『情報』に関して2つの大きな革命が起こったと考えている。ひとつはGoogleなどの検索サイトの進化やOvertureなどの検索連動型広告の普及に伴う情報の“検索革命”、そしてもうひとつが、ブログの普及に代表される情報の“発信革命”である。」(p8)
ここまでの議論はみなさんおなじみの議論ですね。ここで言う「検索革命」の主役はYAHOO!、Googleなどの検索エンジン、「発信革命」の主役はブログ、SNSなどCGM(Consumer Generated Media)と呼ばれるメディアを活用した、普通の消費者の情報発信行動であるわけです。しかし、それに続けてこの本の著者の一人、滝日伴則氏は続けて主張します。
「ただ、ブログ以外のウェブメディアを含めて何十ものウェブサイトの情報を読みこなすのは、ブラウザのブックマーク機能を駆使しても、非常に手間のかかる作業である。さらにせっかくアクセスしたものの、そのウェブサイトの内容が更新されていないこともある。時間と手間の両方であまりにもロスが大きく、決して効率的とはいえないだろう。
そこで注目されたのがRSSである。」(p12)
「RSSリーダーに、自分が取得したいブログのRSSファイルのアドレスを登録しておけば、更新された記事だけが表示される。これによりユーザーは、更新の有無を確認するためにわざわざブログなどのウェブサイトにアクセスする必要がなくなる。つまり、大量の情報を受信する時間を、大幅に削減してくれるのだ。」(p13)
筆者はこれを、RSSによる情報の“受信革命”と名づけ、検索革命、発信革命に匹敵するWEB世界の大きな出来事と規定しています。
もう使っている人も多いと思うのであまり説明しませんが、RSSはブログなどの更新情報などを発信するのに使われるXMLベースのフォーマットで、実際の更新情報を「RSSフィード」、RSSフィードを読み取るソフトを「RSSリーダー」と呼びます。
確かにこの主張を聞くと、RSSというものが大きな革命のように思えます。RSSがWEBの情報が爆発的に増える中で手間をかけずに自分の欲しい情報が得られる手段である、と考えれば、大いに意義あるものです。Yahoo!などポータルサイトでもRSSリーダーを組み込むところが増えているし、マイクロソフトの次期IE7では、RSSリーダーが標準搭載になるとのことです。各社がこのサービスに注力するのも、RSSという機能の意義の大きさからでしょう。
2.RSSの特質...メルマガとの違い
「情報受信の形態だけを見ればRSSは完全な『プッシュ型情報配信ツール』に見えるが、実情は少し違っている。(中略)更新された情報だけが自動的に表示されるという点では、RSSの役割はメールマガジンに似ているかもしれない。だが、情報収集手段としてのメールにはいくつかの問題点が生じている。そのひとつが、ほぼ無差別的に送りつけられてくるスパムメールである。(中略)一方のRSSは、あくまでユーザーが取得したいRSSを、RSSリーダーに登録して始めて配信される。(中略)RSSについて、よく使われるキーフレーズが『Consumer is in control』である。直訳すると『消費者が支配権を持っている』という意味になるが、RSSにおいては情報の受信決定権はあくまでユーザー側にあるため、企業が一方的に情報を配信することは不可能であるということ、すなわち、RSSが完全な消費者主導型メディアであることを意味している。」(p13-15)
WEBを使って何か新しい情報を届けたいとき、受信者サイドではスパムメールでなくても、メール(メルマガ)であれば、次から次へと新しいメールが届き、忙しくてうっかりしていると読んでない大量のメールがメーラーに蓄積する、という自体が起きます。これは情報の発信側、受信側双方にとって都合のいいことではありません。しかしRSSならば更新情報だけ表示されるので、受信者は、読みたいときに読みに行けばいいので、受信者の負担はほとんどありません。
RSSは、情報をメールで配信する行為に似てますが、まさに「消費者(受信側)主導」で、情報の配信がうけられる点で新しいものです。
会社ではときどき、新聞の切抜きが回覧されてきますが、WEB上で自分の好きな記事を自動的に回覧してもらうような仕組みだといえるかも知れません。
3.RSSの媒体価値
RSSが次期のコミュニケーションツールとして有望なものである以上、WEBサイトを運営する企業側では、RSSを活用したコミュニケーション戦略のありかた、というのが今後模索されるべきだと思います。この本にはそうした点にも若干触れられています。
中でも、私自身興味を引かれたのは、RSSを(RSSフィード)を広告媒体として使おうという試みです。
どういうことかというと、更新情報であるRSSフィードに、コンテンツマッチ技術によって関連ある広告(テキスト広告など)を表示させようという試みです。課金の方法はAdwords(仕組み的にはAdsenseの方が近いようです)などと同様、クリック課金を想定しているようです。「RSS広告社」という社名の会社まであるみたいです。
まぁ正直言うと、ビジネスの先行きは今のところ?ですが、検索連動広告の盛り上がりを数年前までは誰も予測できなかったように、この業界では新しいサービスが数年後爆発的にヒットする、ということも十分あり得ます。
新しい広告媒体として、その成長は見守っていきたいと思います。
RSSのマーケティングツールとしての価値に関心のある方、あまり類書もないと思いますので、ぜひご一読ください。
☆塚田耕司、滝目伴則、田中弦、楳田隆、片岡俊行、渡辺聡著「RSSマーケティングガイド」(2006年)インプレス
RSSマーケティング・ガイド 動き始めたWeb2.0ビジネス
さて、今回もWEB2.0がらみの本を取り上げます。「WEB2.0」も専門家だけではなく、普通のビジネスマンの日常会話の範囲に入ってきたようです。最近もエコノミストで比較的まとまった特集が組まれていました。
その中でも「RSS(RSSマーケティング)」に関する本を今回紹介します。
「RSS」という言葉も、最近急に市民権を得た感じです。「半年ぐらい前は聞いたことあるくらいで何のことかさっぱりわからなかったけど、今は何となくわかる」 ...そう感じる人も多いのではないでしょうか。
しかし、それでも「RSSマーケティング」というのはかなりニッチな感じがします。RSS自体がWEBコミュニケーションのツールとしてようやく普及し始めた段階なのに、もうマーケティングの道具、つまり金儲けの道具に使おうというのですから、ちょっと前のめりな感じがしないでもないですが、野心的な取り組みであることは間違いありません。
それでもこの本を読むと確かにRSSの可能性に気づかされます(あくまでWEBコミュニケーションのツールとしての可能性で、マーケティングツールとしての直接的な可能性ではありませんが...)。
1.RSSの意義
「1990年代後半からのインターネットの発展によって、私は『情報』に関して2つの大きな革命が起こったと考えている。ひとつはGoogleなどの検索サイトの進化やOvertureなどの検索連動型広告の普及に伴う情報の“検索革命”、そしてもうひとつが、ブログの普及に代表される情報の“発信革命”である。」(p8)
ここまでの議論はみなさんおなじみの議論ですね。ここで言う「検索革命」の主役はYAHOO!、Googleなどの検索エンジン、「発信革命」の主役はブログ、SNSなどCGM(Consumer Generated Media)と呼ばれるメディアを活用した、普通の消費者の情報発信行動であるわけです。しかし、それに続けてこの本の著者の一人、滝日伴則氏は続けて主張します。
「ただ、ブログ以外のウェブメディアを含めて何十ものウェブサイトの情報を読みこなすのは、ブラウザのブックマーク機能を駆使しても、非常に手間のかかる作業である。さらにせっかくアクセスしたものの、そのウェブサイトの内容が更新されていないこともある。時間と手間の両方であまりにもロスが大きく、決して効率的とはいえないだろう。
そこで注目されたのがRSSである。」(p12)
「RSSリーダーに、自分が取得したいブログのRSSファイルのアドレスを登録しておけば、更新された記事だけが表示される。これによりユーザーは、更新の有無を確認するためにわざわざブログなどのウェブサイトにアクセスする必要がなくなる。つまり、大量の情報を受信する時間を、大幅に削減してくれるのだ。」(p13)
筆者はこれを、RSSによる情報の“受信革命”と名づけ、検索革命、発信革命に匹敵するWEB世界の大きな出来事と規定しています。
もう使っている人も多いと思うのであまり説明しませんが、RSSはブログなどの更新情報などを発信するのに使われるXMLベースのフォーマットで、実際の更新情報を「RSSフィード」、RSSフィードを読み取るソフトを「RSSリーダー」と呼びます。
確かにこの主張を聞くと、RSSというものが大きな革命のように思えます。RSSがWEBの情報が爆発的に増える中で手間をかけずに自分の欲しい情報が得られる手段である、と考えれば、大いに意義あるものです。Yahoo!などポータルサイトでもRSSリーダーを組み込むところが増えているし、マイクロソフトの次期IE7では、RSSリーダーが標準搭載になるとのことです。各社がこのサービスに注力するのも、RSSという機能の意義の大きさからでしょう。
2.RSSの特質...メルマガとの違い
「情報受信の形態だけを見ればRSSは完全な『プッシュ型情報配信ツール』に見えるが、実情は少し違っている。(中略)更新された情報だけが自動的に表示されるという点では、RSSの役割はメールマガジンに似ているかもしれない。だが、情報収集手段としてのメールにはいくつかの問題点が生じている。そのひとつが、ほぼ無差別的に送りつけられてくるスパムメールである。(中略)一方のRSSは、あくまでユーザーが取得したいRSSを、RSSリーダーに登録して始めて配信される。(中略)RSSについて、よく使われるキーフレーズが『Consumer is in control』である。直訳すると『消費者が支配権を持っている』という意味になるが、RSSにおいては情報の受信決定権はあくまでユーザー側にあるため、企業が一方的に情報を配信することは不可能であるということ、すなわち、RSSが完全な消費者主導型メディアであることを意味している。」(p13-15)
WEBを使って何か新しい情報を届けたいとき、受信者サイドではスパムメールでなくても、メール(メルマガ)であれば、次から次へと新しいメールが届き、忙しくてうっかりしていると読んでない大量のメールがメーラーに蓄積する、という自体が起きます。これは情報の発信側、受信側双方にとって都合のいいことではありません。しかしRSSならば更新情報だけ表示されるので、受信者は、読みたいときに読みに行けばいいので、受信者の負担はほとんどありません。
RSSは、情報をメールで配信する行為に似てますが、まさに「消費者(受信側)主導」で、情報の配信がうけられる点で新しいものです。
会社ではときどき、新聞の切抜きが回覧されてきますが、WEB上で自分の好きな記事を自動的に回覧してもらうような仕組みだといえるかも知れません。
3.RSSの媒体価値
RSSが次期のコミュニケーションツールとして有望なものである以上、WEBサイトを運営する企業側では、RSSを活用したコミュニケーション戦略のありかた、というのが今後模索されるべきだと思います。この本にはそうした点にも若干触れられています。
中でも、私自身興味を引かれたのは、RSSを(RSSフィード)を広告媒体として使おうという試みです。
どういうことかというと、更新情報であるRSSフィードに、コンテンツマッチ技術によって関連ある広告(テキスト広告など)を表示させようという試みです。課金の方法はAdwords(仕組み的にはAdsenseの方が近いようです)などと同様、クリック課金を想定しているようです。「RSS広告社」という社名の会社まであるみたいです。
まぁ正直言うと、ビジネスの先行きは今のところ?ですが、検索連動広告の盛り上がりを数年前までは誰も予測できなかったように、この業界では新しいサービスが数年後爆発的にヒットする、ということも十分あり得ます。
新しい広告媒体として、その成長は見守っていきたいと思います。
RSSのマーケティングツールとしての価値に関心のある方、あまり類書もないと思いますので、ぜひご一読ください。
☆塚田耕司、滝目伴則、田中弦、楳田隆、片岡俊行、渡辺聡著「RSSマーケティングガイド」(2006年)インプレス
RSSマーケティング・ガイド 動き始めたWeb2.0ビジネス
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