今回紹介する本は、2003年に出版されたオンラインコミュニティをテーマにした本です。
 2003年というとオンラインの世界では、もう“昔”ですね。本題とはそれますが、この本の中身を読むと、いかにネットの世界の変化が激しく予測不可能なのか、ということを実感させられる一節がありました。ネット上でユーザー同士が情報交換するための機能についての見解なのですが、抜き出します。

 「米国でも落ち着いて会話を交わすコミュニティでは、相変わらず掲示板(ブリテンボード)が主流である。閲覧のしやすさ、ぶらぶらして気に入ったところを探せる、時間的に制約されないという点から見て、やはりコミュニティ・メディアのグローバルスタンダードは、掲示板であろう。」(p121)

 本の中には「インスタントメッセンジャー」の記述も、「ブログ」の記述も、「SNS」の記述もありません。別に悪意があって引用したのではありませんが、これを読むと、われわれは通常「今できること」をベースに「これからのビジネス」を考えているわけですが、それで本当に大丈夫なのか? ということに気づかされ、少し不安になります。特にネットの世界では言えることでしょう。

 とはいえ、このような本を取り上げたのは、最近読んでしまったからではありますが、この著者の会社「ガーラ」というところに興味を感じたからでした。

 ガーラという会社、ネットコミュニティの運営などを日本でいち早く取り入れた会社らしいのですが、私自身は、2ちゃんねるなどに代表されるネット上の書き込み・評判などを測定・分析するというユニークなサービスにいち早く取り組んだ会社としてその名前を聞いていました。
 ネット上で自社や自社ブランドがどのように語られているのかを把握できる、ということは大変興味あるテーマです。ネットの世界は膨大ですから、どこで何を言われているのかわかりません。悪評を知りその原因を早期に解決したり、良い評判を聞いてそれを元に効果的なコミュニケーションを展開していくことが出来れば、企業にとってメリットは大きいわけです。
 昔の「お庭番」のような役割ですね。

 こうしたニーズに対して、独自の検索エンジンを開発し、日本で最初に(たぶん)商用サービスを始めたのがガーラなのです。さらに、今年6月のニュースによると、ガーラに電通が出資を行い、電通とアライアンスを組んで、ネット上のクチコミ分析を自動化した「電通バズリサーチ」というサービスを10月から開始するとのことでした。

 とても興味深いニュースですね。そこで、彼らのサービスを語った本を読んで見ようと思ったわけです。
 本で紹介されているのは旧バージョンのサービスだと思いますが、本書中では「バイラルシェア・リサーチ」と呼んで、ネット上の評判分析サービスを紹介していました。

 「ネット上の口コミ情報、生声情報を通じて、自社の製品やブランドなどの情報がどれだけ語られているか、つまりユーザーの顕在化されたマインドシェアを、定量的に測定する手法が、バイラルシェア・リサーチである。」(p201-202)

 「バイラルシェアは、およそ次のようなプロセスで測定される。
。絅泪ぅ縫鵐亜*注)の巡回ロボットによるデータ収集
⊆集したデータから掲示板や個人HPの生声情報を抽出し、カウント
8譴蕕譴討い訝姥譴鮹蟒个掘⊇亳宿囘戮鬟ウント
ど床措瓦砲覆訝姥譽哀襦璽廖米胆)を策定する。
ッ姥譽哀襦璽廖米胆)の出現頻度をカウント
生声以外の情報も同様に分析し、生声情報と比較する」(p202)
  *注 eマイニング:ロボット型のメタサーチエンジン


 この中で、´↓にあたる、検索語(ブランド名など)に対する文章の抽出と単語カウントレベルは、今では結構普通になっていて、日本では例えばテクノラティジャパンというサイトなんかでは、今回の衆議院議員総選挙に関連して、関連するワードの出現頻度などを発表したりしています。はてなダイアリーなんかでも、自分のところのブログで言及されたワードをカウントしてグラフ化したりしています。
 しかし、きキΔ箸いΔ里牢蔽韻任呂覆い隼廚い泙垢掘△海良分が企業としては知りたい部分ですね。評価軸になる単語グループ(特性)を策定し、その出現頻度をカウントするというのは、つまり語られている話題、例えばデジタルカメラなら、ユーザーの評価情報にしても、デザインのことなのか、機能のことなのか、それ以外のことなのかを分類してカウントする、ということです。この他にニュース情報としてネット上に登場しているものがあったりして、全然意味合いが違うわけです。従来は、このあたりを人力中心でやられていたようなのですが、新サービスでは自動化される、ということなのでしょうか。
 
 冒頭に言いましたように、今となっては古い本なので、現在できることが説明されているわけではないのですが、「ネット上の評判を知る」という課題へのガーラなりのそもそもの取り組みが分かる本です。
 もっともこの本の中身は、ほとんどガーラがやっていることの説明なのですが。

 気になったことを一つ。同じガーラの8月のニュースリリースの中で、「ガーラがライブドアブログの口コミ情報をマーケティングリサーチに独占的に利用する契約を締結しました」とあります。「ブログの口コミ情報を独占的に利用する」...??? ナンですかねそれ? このブログ、ライブドアのブログなのですが、ここで書いているようなことが彼らに独占的に商業利用されるということですかね? 著作権はワタシにあると思うのですが、それはどうなってしまうのですかね??? ライブドアさん、説明が欲しいですね。
 ちょっとイヤな感じですね。

☆村本理恵子、菊川曉「オンライン・コミュニティがビジネスを変える」(2003年)NTT出版

オンライン・コミュニティがビジネスを変える―コラボレーティブ・マーケティングへの転換