「店頭はマーケティングのラスト1マイル」という言い方を聞いたことがある人がいると思います。この言葉の趣旨は実はよく分からないのですが、まぁマーケティング活動の締めくくりの部分として、注意を怠ってはいけない、という戒めだと思います。
自分のところの商品を買ってもらう上で、大切な部分だということは、普通に考えてもわかりますね。特に生活必需品のたぐいは、お店に入ってから何を買うのか決めたり、複数のブランドの中からどれにするのか決めたりしています。
店頭での消費者行動の研究は比較的前から行われており、いろいろな文献が出ています。スーパーやコンビニに勤めている人にとっては既に当たり前となっているノウハウが少なからずあると思います。
この本は、そうした研究の中でも「実際の顧客の購買行動を店内で尾行し、ビデオに収めたり、追いかけていって出口で質問したりする」ような泥臭い調査研究(トラッキング調査と本書では読んでいます)を実施し、興味深い発見をするノウハウを持つリサーチ会社、米エンバイロセル社と博報堂との共同プロジェクトが日本の読者向けに書き下ろしたものです。
本書では、店頭で売上げを伸ばすためのちょっとしヒントが満載されています。例えば、
・どこが本当の入り口なのか考える(p54)
ショッピングセンターのスーパーなどでは、正面入り口がとても立派だとしても、ほとんどの買い物客は駐車場から来るので、裏の暗く殺風景な入り口から入ってくる。こちらの方が多くの客の本当の入り口なのだ。(だからその入り具口に工夫を!、ということ)
・人はカニ歩きしないので、商品は通路に対して斜めに(p72)
歩いている人に角度をつけて商品をディスプレイした方が見やすい(当たり前だが)。あるスーパーでエンド棚の商品を15度変えたところ人の流れが変わった。
などなど。
読んでみれば、「へぇ〜」と思える発見がいろいろあって面白いです。実際にスーパーの店長さんやコンビニのオーナーさんにとっては、明日にでも使える「即戦力ノウハウ」に溢れてると思えるのではないでしょうか。イラストもいい感じです。
ただ悪い意味ではないのですが、コネタ集なのですよね。足で稼いだり、人間観察に基づくような「インサイト」チックな情報というのは、ある特定の文脈に当てはめると非常に威力が大きいのですが、この本のようにバラバラと提示すると、一つ一つが小さな情報に見えてしまいます。「店頭マーケティングトリビアの泉」というようなものになってしまうのです。
著者の意図としてはそれでいいのかもしれませんが、エンバイロセル社の本来志向する方向性とは違うような気もするのですが、どうなのでしょう?
それから私個人では、最終章に出ていた店頭の購買行動のデータ(観察データ)が面白かったです。
デジタルカメラと洗濯機の売り場での観察データですが、例えばデジカメは売り場来場者のうち購入したのが10.7%、つまり約9割は見に来ただけ。特に男性は購入者が7.5%しかいません。また来場者のうちカタログに接触したのは29.3%(カタログを見た、または持って帰っただけの人は購買者の2倍)だそうです。
店頭が最終決定の場ではなく、広告活動の場となっているという指摘は以前からされていましたが、その裏付けとなるような貴重なデータです。
ひょっとすると、店頭はもはや「ラスト1マイル」ではないのかも知れませんね。
☆博報堂パコ・アンダーヒル研究会、小野寺健司・今野雄策編「ついこの店で買ってしまう理由」(2005年)日本経済新聞社
ついこの店で買ってしまう理由(わけ)
自分のところの商品を買ってもらう上で、大切な部分だということは、普通に考えてもわかりますね。特に生活必需品のたぐいは、お店に入ってから何を買うのか決めたり、複数のブランドの中からどれにするのか決めたりしています。
店頭での消費者行動の研究は比較的前から行われており、いろいろな文献が出ています。スーパーやコンビニに勤めている人にとっては既に当たり前となっているノウハウが少なからずあると思います。
この本は、そうした研究の中でも「実際の顧客の購買行動を店内で尾行し、ビデオに収めたり、追いかけていって出口で質問したりする」ような泥臭い調査研究(トラッキング調査と本書では読んでいます)を実施し、興味深い発見をするノウハウを持つリサーチ会社、米エンバイロセル社と博報堂との共同プロジェクトが日本の読者向けに書き下ろしたものです。
本書では、店頭で売上げを伸ばすためのちょっとしヒントが満載されています。例えば、
・どこが本当の入り口なのか考える(p54)
ショッピングセンターのスーパーなどでは、正面入り口がとても立派だとしても、ほとんどの買い物客は駐車場から来るので、裏の暗く殺風景な入り口から入ってくる。こちらの方が多くの客の本当の入り口なのだ。(だからその入り具口に工夫を!、ということ)
・人はカニ歩きしないので、商品は通路に対して斜めに(p72)
歩いている人に角度をつけて商品をディスプレイした方が見やすい(当たり前だが)。あるスーパーでエンド棚の商品を15度変えたところ人の流れが変わった。
などなど。
読んでみれば、「へぇ〜」と思える発見がいろいろあって面白いです。実際にスーパーの店長さんやコンビニのオーナーさんにとっては、明日にでも使える「即戦力ノウハウ」に溢れてると思えるのではないでしょうか。イラストもいい感じです。
ただ悪い意味ではないのですが、コネタ集なのですよね。足で稼いだり、人間観察に基づくような「インサイト」チックな情報というのは、ある特定の文脈に当てはめると非常に威力が大きいのですが、この本のようにバラバラと提示すると、一つ一つが小さな情報に見えてしまいます。「店頭マーケティングトリビアの泉」というようなものになってしまうのです。
著者の意図としてはそれでいいのかもしれませんが、エンバイロセル社の本来志向する方向性とは違うような気もするのですが、どうなのでしょう?
それから私個人では、最終章に出ていた店頭の購買行動のデータ(観察データ)が面白かったです。
デジタルカメラと洗濯機の売り場での観察データですが、例えばデジカメは売り場来場者のうち購入したのが10.7%、つまり約9割は見に来ただけ。特に男性は購入者が7.5%しかいません。また来場者のうちカタログに接触したのは29.3%(カタログを見た、または持って帰っただけの人は購買者の2倍)だそうです。
店頭が最終決定の場ではなく、広告活動の場となっているという指摘は以前からされていましたが、その裏付けとなるような貴重なデータです。
ひょっとすると、店頭はもはや「ラスト1マイル」ではないのかも知れませんね。
☆博報堂パコ・アンダーヒル研究会、小野寺健司・今野雄策編「ついこの店で買ってしまう理由」(2005年)日本経済新聞社
ついこの店で買ってしまう理由(わけ)
コメント