現在、「口コミマーケティング」がかつてないほど注目されています。
アメリカでは今年の初め「Word of Mouthマーケティング協会」なるものが設立され、有名大手企業が多数参加しているようです。日経ビジネスでも特集をしているのを見ました(2005.5.9号)

「口コミマーケティングって、渋谷の女子高生の“トレンドリーダー”(笑)に新しいチョコレートの口コミをしてもらったりするやつでしょ? 胡散臭〜〜い!」

これが、数年前までの常識的な広告マインドを持つ人の反応でした。

しかし時代は変わりつつあります。
携帯電話や、ネット・ブログ(まさにこれです!)の技術的進化により、フツーの人の発言が大勢の人に影響を与えうる環境が出来上がってきました。それにより、今まで「口コミ」の影響力の及ぶ範囲が、ある小さなコミュニティ(例えば学校の友人関係や会社のOL仲間など)内で収まっていたものが、地域を超え、一度に多いときは数千から数万人という規模に広がりました。それだけでなく、従来は「言い捨て」(その場限りの情報)であったものが、ネット上に「記録」され、いつでも参照できるようになったのです。
さらに一般には、そうした情報には「本音」があり、「信頼性」が高く、広告などで提供される情報よりも価値があると思われています。

そうなると企業はこうした「口コミ」を無視できなくなります。時には企業の意図とは関係なしにネガティブ情報が広まったりもします。そこで「口コミネットワーク」を利用して新しいカタチの広告宣伝をしようしたり、ネット上の評判をチェック、コントロールしようとするわけです。

それが「口コミマーケティング」が今注目される背景です。

この本は、口コミについての原理的な情報を提供してくれます。口コミを広める人とはどんな人か、口コミを広げる上で大切なこと、やってはいけないことなど。アメリカの事例ですが口コミにより効果をあげたケースなども紹介されています。

この本の元の出版年は2000年であり、今実際にネット上で行われているマーケティング活動は、既にこの本の内容を超えているかもしれません。しかし、人間の自然なコミュニケーション活動である「口コミ」の原理原則を理解するうえでは、有益な本だと思います。その意味でお勧めです。

しかし、最近知ったのですが、ネット上の「口コミマーケティング」というのは何でもありですね。法に反しているとは言えないまでも、情報操作すれすれ、完全にマナー違反のことが平気で行われているようです。何が信頼できるのか、本当にわからなくなります... みなさんが何気なく読んでいるネット上の情報も、誰かが操作している情報かも知れませんよ!!


★エマニュエル・ローゼン、濱岡豊訳「クチコミはこうしてつくられる」(2002年)日本経済新聞社

クチコミはこうしてつくられる―おもしろさが伝染するバズ・マーケティング