広告代理店の現場からみた読書案内

広告・マーケティング関連の書籍を、広告業務の一線で働いている立場から紹介・書評します。

April 2006

 「Web2.0」という言葉を最近よく耳にするようになりました。Webのバージョンアップとして新しく開ける未来を感じさせる言葉ではありますが、一方でジャーゴン(小難しい専門用語)の雰囲気をプンプン漂わせている言葉でもあります。
 もっとも、その意味するところを何となく感じ取ると、意外に便利な言葉です。今日も打ち合わせで、「それはWeb2.0的な仕組みで進めるといいと思う」などと自分でも使ってしまいました。全然伝わってなかったりして(苦笑)。

 それはさておきWebの世界ではホットなテーマであることは間違いなく、Web2.0をテーマにした本も何冊か出ています。今日はその中から最近読んだ2冊を紹介します。「ウェブ進化論」「Web2.0 Book」です。

 まず、そもそも「Web2.0」とは何なんでしょう? それぞれの本からそれを説明している文章を引用します。

 「Web2.0の本質とは何なのか。(中略)『ネット上の不特定多数の人々(や企業)を、受動的なサービスの享受者でなく能動的な表現者と認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発姿勢』がその本質だと私は考えている。」(ウェブ進化論 p120)

 「Web2.0とは、『インターネット上でのこの数年間に発生したWebの環境変化とその方向性(トレンド)をまとめたもの』です。特定の技術やサービス、製品などをさすものではありません。第二世代のWebという意味です。(中略)ではWeb2.0時代のトレンドとはなんでしょう? それは『Webのネットワーク化、すなわち構造化が進む』ことです。」(Web2.0 Book p18)


 わかります? よく読めば何となくわかるような気がしますが、わかりにくいですよね。その大きな理由というのは、Web2.0というのが、何か具体的なモノを指し示す語ではなくて、Webに関わる大きな変化のあり方を指しているというところに起因するのだと思います。この2つの文章「Web2.0の本質とは」と「Web2.0とは」についても、全然違うことが書いてあるような気もしますよね。こういうところも、Web2.0がもともと抽象的な概念で、捉えにくいものだからだと思います。ただし、前者がより社会的な視点から、後者がより技術的視点から捉えていると考えることはできそうです。それは前者の著者梅田氏が主にコンサルタントとしてのキャリアの中でWebに関わってきた人であり、後者の著者小川氏と後藤氏がどちらも現にITベンチャーに技術的側面から関わっている人である、という立場の違いが反映しているのかも知れません。

 さて、1冊目「ウェブ進化論」ですが、これはWebの最近の動きがもたらすネット社会全体の大きな変化について書いた本であり、その動きの重要なキーワードとしてWeb2.0が紹介されています。Web2.0がタイトルになってはいませんが、Web2.0という言葉が表現しようとしてる、Webの新しい動きをまとめた本だといえます。
 全体の感想から言うと、新書で薄い本ではありますが、大変内容の詰まった良書だと思いました。非常に大きな視点から書かれていますし、内容もWeb2.0的なものがもたらす希望と課題の両面が語られていてバランスが取れています。Web2.0がらみで、私が漠然と感じていた違和感がいくつかあったのですが、それが解消されるような記述も随所にありました。あのSBIホールディングス北尾吉孝CEOが「ウェブ進化論を全社員の必読書にした」というニュースが流れましたが、それくらいされていい本だと私も思います。

 本書の中でも、いくつか面白いと思ったポイントをまとめました。

・Googleとチープ革命で情報環境が変わる
 ネットを通じて普通の人が情報を発信するコストは劇的に低下しています(チープ革命)。しかし彼らからネット上に発信された情報(コンテンツ)は玉石混交だったため、全体としての影響力はこれまで限られていました。しかし筆者は言います。Googleがコンテンツの価値付けを「民主的」に行う仕組み(Page Rank)を普及させたために、ユーザーは“玉”のコンテンツだけを選び出してアクセスすることが可能になった。その結果、ネット上の情報(消費者発信情報)の影響力が飛躍的に高まるようになるだろう、と。
 なるほど! 確かにネット上にころがっている情報は玉石混交です。そのままの形で情報が増え続けるだけなら、みんなネットから情報を得ることに価値を感じなくなるでしょう。Googleにそれをする明確な意図があるのかどうかわかりませんが、結果として「検索エンジン」というフィルターをかけることで、より人気のあるもの(=価値のある情報)とそうでないものとに分けられていくのでしょう。しかし本書で指摘しているように、もしGoogleが本気でそれを意図しているとしたら、Googleとは凄い会社であり、同時に怖い会社でもあります。

・デジタルコンテンツの著作権問題に見る、交わりがたき2つの立場

 「『総表現社会の到来』とは、著作権に鈍感な人の大量新規参入(ブログの書き手やグーグルのようなサービス提供者の両方)を意味する。新規参入者の大半は、表現それ自体によって生計を立てる気がない。別に正業を持っていて、表現もする書き手などはそういう範疇に入る。そして総表現社会のサービス提供者とは、『表現そのものの政策によってではなく、表現されたコンテンツの加工・整理・配信を事業化する』人たちで、既存の著作権の仕組みを拡大解釈するか、新しい時代に合わせて改善すべきだと考える。Web2.0はそういう方向性を技術面からさらに後押しするのだ。著作権をめぐるさまざまな議論が、感情的かつ平行線をたどりやすい真因はここにある。」(ウェブ進化論 p183) 

 そうなんです。デジタルコンテンツに関わる立場の人を2つに分けるとすると、制作者(クリエイター)と加工者(ネット配信等の事業者)に分かれると思います。私は仕事柄制作者側にシンパシーを感じるわけではありますが、同時に加工者側に対しては、彼らの無形の制作物(コンテンツ)に対するある種のリスペクトのなさや権利関係への鈍感さを感じてしまうときがあります。しかし加工者側は、普段はオープンソース環境でソフト開発を行っているような人であるのでしょうから、「作ったものは共有化してみんなでより良いものを作っていけばいい」「制約されるとやりづらい」という文化が体に染み付いているのかも知れません。そうすると彼らの考え方もちょっとは理解できるような気がしてきます。それでもそれがいいことだとは思えませんが。

・Web2.0のユーフォリア(多幸症)的雰囲気
 さらに、私が気になっていることは「Web2.0」が語られる時の、一種独特のユーフォリア(多幸)的雰囲気です。Web2.0を語る人は、ワクワクしてまさにこれから新しいことが始まるという高揚感と共に語っているようなことが多い気がします。決して悪いことではないですが、そうした雰囲気は批判を封じ込め、新しいことへ盲信や価値の押し付けを伴いがちです。
 だから私は、正面切って「Web2.0は...」というような言い方には違和感があるし、そういうことを言う人には胡散臭さを感じてしまいます。

 このことに関連して筆者はこんなことを書いています。

 「シリコンバレーにあって日本にないもの。それは若い世代の創造性や果敢な行動を刺激する『オプティミズムに支えられたビジョン』である。全く新しい事象を前にして、いくつになっても前向きにそれを面白がり、積極的に未来志向で考え、何かに挑戦したいと思う若い世代を明るく励ます。それがシリコンバレーの『大人の流儀』たるオプティミズムである。もちろんウェブ進化についての語り口はいろいろあるだろう。でも私はオプティミズムを貫いてみたかった。これから直面する難題を創造的に解決する力は、オプティミズムを前提とした試行錯誤以外からは生まれ得ないと信ずるからである。」(p247)
 
 私が違和感を感じるようなことを筆者は「日本にない、シリコンバレー流のよいところ」と言っているような気がします。そう言われれば、私も知らず知らず“守り”に入っているかも知れないと思いました。ちょっと反省です。

 こんな指摘をするあたりでも、この本はバランスの取れたいい本だと思うわけです。他にもWeb2.0的なあり方への課題提起的なテーマとして、Wikipediaを取り上げ、そこに見られる「信頼性」の問題や「管理されないものを管理する人」の問題、「大衆の知恵」の問題などに触れており、考えされられるポイント満載です。


 さて次に、もう一つの本「Web2.0 Book」ですが、これは「ウェブ進化論」に比べ、より技術寄りであり具体的です。Web2.0の背景となっている新しいテクノロジーや、それを活用した新たなサービス、そしれその代表的企業(Google、Amazon、テクノラティ、はてなど)についてページを割いて紹介しています。「本書の読者対象」として、「インターネットビジネスやIT技術に興味を持つビジネスパースンを主な対象としています」とあり、入門書という位置づけではなく、Webを中心としたビジネスにある程度携わっている人向けといえます(技術的な専門用語もたくさん出てきます)。

 ウェブ進化論に比べて、ユーフォリア感が強く、私はそこが少し馴染めませんでしたが、Web2.0で具体的に何ができるの? ということを手短に知りたい人にはいい本だと思います。

 私は逆から読みましたが、最初に「ウェブ進化論」、次に「Web2.0 Book」という順で2冊合わせて読むといいと思いました。最初にWeb2.0が大体どんなことで、どんな社会的インパクトがあるのかということがわかり、次に具体がわかる、ということで、頭の整理もできるし、社会的視点と技術的視点の2つの視点からWeb2.0を考えることができると思うからです。こういう読み方をおススメします。

 今回本当は、Web2.0時代とコミュニケーションビジネスについても少し書こうと思っていたのですが、話が長くなってしまったので、それは機会を改めて触れたいと思います。

☆梅田望夫「ウェブ進化論」(2006年)ちくま新書
ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる


☆小川浩、後藤康成「Web2.0 Book」(2006年)インプレス
Web2.0 BOOK

 約1ヵ月ぶりの更新となってしまいました。仕事の方が忙しく、帰りが遅い上に家に持ち帰って仕事をするような時期がしばらく続いたので、さぼってしまいました。
 定期的に訪問されていた方、申し訳ありません。

 さて、今回はGoogleのビジネスの話です。これを読んでる人でGoogleを知らない人はいないと思いますが、Googleのビジネスについては知らない人は少なくないと思います。
 Googleは何で儲けているのか? 
 ちょっと前までは実は、私もよく知りませんでした。

 例えば同じ検索エンジンでもYahoo!ならばポータルサイトだし、バナー広告もあるし、Yahoo!オークションなどに参加するにも手数料をとられたりするので、そういう部分がビジネスになっているのだろうなと想像できるわけです。Googleはバナー広告もないし、検索すると確かに画面の横とか上にスポンサー表示がでるので、この部分が広告になっているのだろうとはわかるのですが、そんなので儲かるのか?と思ってしまうわけです。
 しかし米国でナスダックに上場しているGoogleの時価総額は1100億ドル(3月現在...12兆円以上!)にも達し、インテルやIBMと肩を並べるといいます。つまりGoogleは安定的に収益を上げ、将来もっと伸びる会社として高く評されているわけです。

 その"儲け"の秘密は...知っている方は知っての通り「広告」であるわけです。それも主力は検索と同時に画面の上や横に表示されるあれで、「リスティング広告」と呼ばれるものです。
 まあ、検索と同時に表示されるので検索連動型広告とも呼ばれるわけですが、これは実はアメリカでは既にオンライン広告の40%(市場規模自体は昨年で1兆円を超えている)を占め、年率20%以上の成長しているめるネット広告の主力分野となっているものでもあります。日本ではアメリカほどではありませんが、インターネット広告市場2,700億円のうち590億円(約22%)を占めているとされており(電通総研推定)、やはりインターネット広告の中でも成長分野です。
 リスティング広告の仕組みは簡単。表示されるキーワードがクリックされるに応じて広告主に課金される仕組みで、クリック1回あたりの単価も一般的に低額です(Googleのリスティング広告サービス"Adwords"の場合最低1円から)。つまり、広告主にとってはクリックにより自社のサイトに誘引するという確実な効果のある広告活動を低価格(低リスク)でできるという非常に大きいメリットがある、という仕組みなわけです。
 こうした新しい広告サービスは、次の動きにつながります。それはこれまで広告費の絶対額が高かったために広告活動ができなかった多くの中小の企業が、新たな広告主として広告活動を始めることができることです。特にECサイトでビジネスをしようとする広告主にはこの仕組みは福音だといえます。
 ただしGoogle側にとっても、一回のクリックによる収入は場合によっては数円ということもあります。非常に小さい単位の広告費を集めて運営しなければなりません。ところが新しく参加するようになった多くの広告主と、世界中で一日何億回と検索される検索機会を通じて、その数円単位の広告費がつもりにつもり、実際には巨額の収益があがる構造になっているわけです(こうした小額の広告費を集めることにより成立つ広告ビジネスモデルをロングテール広告などという言い方をすることがあります)。しかもリスティング広告は巨大なシステムを必要とする装置産業であり、売上げは検索エンジン自体の人気度に比例しますから、参入障壁は意外と高く、世界で検索シェアの過半を占めているGoogleにとっては新しい市場を一人勝ち的に獲得することができるというわけです(ただし、日本ではGoogleよりYahoo!の方が検索エンジンとして使われているため、Yahoo!にリスティング広告サービスを提供しているオーバーチュアも有力です)。アメリカで投資先としてGoogleの将来性が評価されるのもうなづけるわけです
 なおGoogleでは検索連動型広告の他に、コンテンツ連動型広告という、いろいろなWEBサイトやブログなどに「Ads by Google」と表示される広告も提供しています。これはWEBサイトやブログなどの記事内容と連動して、関連した広告が自動的に配信される、という仕組みです(今のところはあまり精度が良くないと聞いていますが...)。

 まとめると、検索エンジンの成長とともにリスティング広告という新しい広告マーケットも急成長しており、日本でも世界でもその主要プレーヤーがGoogleである、ということなのです。
 広告ビジネスに関するこのような動きは広告会社にとっては非常に興味深いものなのです。

 というわけで、広告ビジネスの新領域を開拓する企業としてGoogleに興味を持った私が、今回手にしたのが「ザ・サーチ」という本でした。この本はGoogleの創生期から今日までを関係者のインタビューなどに基づいて構成したノンフィクションです。スタンフォード大学でコンピューターサイエンスを学ぶ学生だったラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンの2人の若者が、何を考えどういう経緯でGoogleという会社を興していったのか、そしてどこへ向かおうとしているのか、課題は何なのか、というようなことが、インターネット検索の歴史とともに書かれています。

 例えば、Google以前の検索サービスの勃興と衰退、「ページランク」というユーザーの有用性基準に基づく検索結果の表示、収益モデル開発への苦闘、リスティング広告導入、ナスダック上場など、Googleが巨大企業に成長していく上でトピックとなった出来事などが紹介され、なるほどこういうピンチ(チャンス)をこう考えて乗り切ってきたのか、ということが分かり興味深いものです。

 この本を読んで私のGoogleの印象は変わりました。ある部分ではポジティブに、またある部分ではネガティブにです。

 例えば、Googleのグーグル上場時のこんなエピソードがあったそうです。

 「2004年4月29日、グーグルは証券取引委員会に新規株式公開の申請書S1を正式に提出したが、それは近来にない内容で、売却株数は2,718,281,828ドル相当だった。この額は一見口からでまかせの数字に思えるが、これはパイと同じようなeの概念(自然対数の底)で、数学マニアによく知られている。この新規株式公開にあたって、専門馬鹿にしかわからないユーモアをふりまくことで、実はグーグルはギーグが管理していることを宣言したかったにちかいない。」(p318)

 このエピソードに象徴されるのですが、Googleは、何か、世の中、例えば政府とか銀行とか産業社会とかエスタブリッシュメントに対して反旗を翻している、という感じが全編を通じて感じられました。「俺たちはお前らの作ったルールには従わないよ!」「ルールは私たちが作る(Web2.0的な言い方をすると利用者が作る、ということになるのでしょうか)」と言いたいかのようです。
 もともとビジネスを起こそう(つまりお金儲けをしよう)という意志からではなく、いいものを作ろう、役に立つものを作ろうという強烈な研究開発への問題意識から会社を起こした部分があるようなので、こうした社風のようなものが出来上がっているのでしょう。実際これまでにも検索領域を中心にして、画期的なサービスを次々に作ってきているわけです。Googleの、信念を持って信じる道を突き進む姿はある種清々しく、こういうのは私は嫌いではありません。

 しかしこうした既存社会に対する挑戦的な姿勢には一方では危うさを感じるのも確かです。
 例えば本の後半では、リスティング広告で入札されるキーワードの商標権に関する問題が触れられています。現状リスティング広告では誰でもどんなキーワードでも入札することができるわけですが、これでは有名ブランド名を全く関係ない会社が購入して広告するようなこともできてしまうわけです。これは、商標権の保護という観点から、いかがなものか? というのが問題点です。
 この問題に関しては既にいくつか訴訟が起きています。アメリカ国内では今のところGoogleに不利な判決が出てはいないようですが、フランスではルイ・ヴィトンなどが訴訟を起こしGoogle側が敗訴しています。この件ではGoogleが"Louis Vuitton"のような商標を第3者(例えば偽造品販売のECサイト)に販売することに制限が加えられ、罰金の支払いも命ぜられました。
 また、クリック詐欺の問題も触れられています。クリック詐欺はコンテンツ連動型広告"Adsense"の仕組みにとっては深刻な問題です。AdsenseではGoogleから個人のブログなどに自動的に広告が配信されますが、そこで掲出された広告はクリックされるごとにわずかばかりの広告掲載料がそのブログサイトにも支払われる構造になっています。この場合、話を単純化して言うとその広告掲載料を取得するため自分のサイトの広告を自らクリックするような詐欺行為が起きる可能性があるということです。もちろんこんな単純なケースはすぐ見つかり広告配信がストップされるとは思いますが、ネットにおける不正技術はいたちごっこの面があるため、不正を行うものが技術を動員した場合には対応にも限界があります。

 「詐欺師はロボットを利用するか、インドや東欧の低賃金労働者を使って、自分とグーグル以外のものは削除し、集中的にクリックする。こうして不注意な広告主はその費用を払うことになる。クリック詐欺はペイドサーチが始まった時から存在し、1990年終わり頃には、ゴートゥー・ドットコム(引用者注:リスティング広告手法を開発した会社で、オーバーチュアの前身)がこの問題に悩まされていた。当時の検索エンジンは詐欺行為の発信元を発見するや、ただちにアカウントを取り消せばすんだが、グーグルのアドセンスは流通範囲が広く、何十万という発信元に対応しなければならず、新たな詐欺の機先を制するのはほとんど不可能に近かった。多くの広告主は、広告予算の25〜30パーセントをクリック詐欺にかすめ取られているという(注:太字は引用者)。」(p275)

 深刻です。

 これらの問題はGoogle1社だけの問題ではなく、リスティング広告というビジネスモデル全体の問題ではあります。しかしGoogleがそこでの主要プレーヤーであり、広告主に対してはこれら負の問題にも応える義務があります。新しいものには負の面がつきものですが、ビジネスをしていく上では、こうした面では「自分がルールを作る」という姿勢は許されるものではないはずく、Googleの存在感が意図せずともどんどん大きくなって来れば来るほど、既存社会のルールや社会の公正さに自らを馴染ませる努力を不断にしていかないといけない、というのも事実でしょう。
 
 「広告」というものに限ってみても、Googleのモデルが新しいあり方を持ち込んだのは間違いありません。最近の論調(例えばWEB2.0的な論調)の中では、新しさや良いところばかり強調する人が多いようにも感じます。しかし、この本を読むとGoogle、あるいはGoogleを中心に開かれていっている、検索をコアにしたビジネスの光の面と陰の面の両方を見ることができます。
 インターネットでのビジネスのこれからのあり方を考えたい人にはお勧めです。

☆ジョン・バッテル、中谷和男訳「ザ・サーチ」(2005年)日経BP
ザ・サーチ グーグルが世界を変えた

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