「アンチ広告」の本を2冊続けて紹介してきましたが、この本もその流れに位置づけられます。私と同業者の人の著作です。
まずこの本は2003年の本ですが、「はじめに」に書かれている以下のことが、現在の広告業界における共通の問題意識と言えます。
1990年代からはインターネット・携帯電話などのパーソナルメディアやデジタル放送などの多メディア化が進み(中略)、これまでのマス広告に偏ったコミュニケーションのあり方への疑問も高まり、近年、世界中で新しいマーケティングの手法の模索が一斉に始まっている。(P1)
この本ではこの問題意識への著者なりの回答として「ライブマーケティング」という概念を提案しています。
“ライブマーケティング”では、「マスメディア主導で、非マスメディアで補完する」という従来のマーケティングフレームとは逆の発想をもとに、メディアの「フレーム」を定めている。つまり非マスメディアによる体感性創出がコア(主導)で、それをマスメディアで補完するのである。(P56)
この主張は以前紹介した「ブランドは広告では作れない」という本の主旨に似ていますね。こうしたコンセプトは今の時代、非常に考慮すべきコンセプトだといえるのです。
他にこの本には「T型志向生活者」など彼らの若者研究から導かれたユニークな概念も提唱されていますが、私がここで取り上げて紹介したかった最も大きな理由は、この本の「非マス広告」についての豊富な事例です。
例えば、数年前に「BMW Films」というのが話題になりました。これはBMWのサイトだけで見られたショートフィルムで、その後のショートフィルムブームのさきがけになったものです。
このショートフィルム、制作料が噂では5億円かかったと聞いていましたが(通常のCMは高くても数千万円)、WEBサイトだけでしか見せないものに、そんなに大金をかけてどうするのだ? と当時思っていました。
しかし、この本によるとBMW側は、そもそもBMW購入者の85%は事前にWEBサイトを見るから、そこで魅力的な体験を提供するのが重要で、それで十分ペイすると考えていたようです。
なるほど、と思いました。
こうした事例や裏話が、手際よく分類整理されています。
こんな簡潔にまとめられた事例があれば、「いやぁ、最近では非マス広告に注目するのがトレンドなんですよ。こんな事例がありまして...」というお客さまへのセールストークの際のネタ本(笑)にバッチリです。
ただ「マス広告」をあんまり否定すると、実は今の日本の大きな広告代理店はすべて自分の首をしめる事になるのですが。
★田中双葉、小野彩「ライブマーケティング」(2003年)東洋経済新報社
ライブマーケティング―「見せる」広告から「まきこむ」広告へ
まずこの本は2003年の本ですが、「はじめに」に書かれている以下のことが、現在の広告業界における共通の問題意識と言えます。
1990年代からはインターネット・携帯電話などのパーソナルメディアやデジタル放送などの多メディア化が進み(中略)、これまでのマス広告に偏ったコミュニケーションのあり方への疑問も高まり、近年、世界中で新しいマーケティングの手法の模索が一斉に始まっている。(P1)
この本ではこの問題意識への著者なりの回答として「ライブマーケティング」という概念を提案しています。
“ライブマーケティング”では、「マスメディア主導で、非マスメディアで補完する」という従来のマーケティングフレームとは逆の発想をもとに、メディアの「フレーム」を定めている。つまり非マスメディアによる体感性創出がコア(主導)で、それをマスメディアで補完するのである。(P56)
この主張は以前紹介した「ブランドは広告では作れない」という本の主旨に似ていますね。こうしたコンセプトは今の時代、非常に考慮すべきコンセプトだといえるのです。
他にこの本には「T型志向生活者」など彼らの若者研究から導かれたユニークな概念も提唱されていますが、私がここで取り上げて紹介したかった最も大きな理由は、この本の「非マス広告」についての豊富な事例です。
例えば、数年前に「BMW Films」というのが話題になりました。これはBMWのサイトだけで見られたショートフィルムで、その後のショートフィルムブームのさきがけになったものです。
このショートフィルム、制作料が噂では5億円かかったと聞いていましたが(通常のCMは高くても数千万円)、WEBサイトだけでしか見せないものに、そんなに大金をかけてどうするのだ? と当時思っていました。
しかし、この本によるとBMW側は、そもそもBMW購入者の85%は事前にWEBサイトを見るから、そこで魅力的な体験を提供するのが重要で、それで十分ペイすると考えていたようです。
なるほど、と思いました。
こうした事例や裏話が、手際よく分類整理されています。
こんな簡潔にまとめられた事例があれば、「いやぁ、最近では非マス広告に注目するのがトレンドなんですよ。こんな事例がありまして...」というお客さまへのセールストークの際のネタ本(笑)にバッチリです。
ただ「マス広告」をあんまり否定すると、実は今の日本の大きな広告代理店はすべて自分の首をしめる事になるのですが。
★田中双葉、小野彩「ライブマーケティング」(2003年)東洋経済新報社
ライブマーケティング―「見せる」広告から「まきこむ」広告へ