広告代理店の現場からみた読書案内

広告・マーケティング関連の書籍を、広告業務の一線で働いている立場から紹介・書評します。

さて、最初に取り上げたのは、自分の仕事を否定するかのような、刺激的なタイトルの本です。

実は「広告」の限界、というテーマは少し前からいろいろな形でなされていて、今もその風潮は収まっていません。その中でもこの本は原題が“The Fall of Advertising & The Rise of PR(広告の落日、PRの台頭)”となっているように、特に「PR」の意義を述べたものです。
 *PRとは新聞・雑誌などに「記事」として掲載される商品の情報です。

「よくよく考えて見れば、ヒット商品は,最初に派手な広告なんかやってないじゃないか。雑誌や新聞の記事に取り上げられて、次第に話題になったものばかりだ!」と言われれば、広告代理店としては立つ瀬がありませんが、そういうケースも実際には少なくありません。例えばスターバックスはテレビ広告をまったくやらずに成功しましたし、反対に数年前の「.COM」ブームの時は、たくさんのIT系企業がテレビ広告をしましたが、それが今や無残なほど残っていません(堀江社長が買収する前の「ライブドア」も派手な広告をしていましたね)。これは日本もアメリカも同じようです。

 無名から有名になるにはどうしたらよいだろうか。広告でそれを達成するには困難を極める。これには2つの理由がある。一つは広告が信頼されていないこと。もう一つは聞いたこともないブランドは信頼されないということだ。(P81)

つまり、「広告には決定的な欠点がある。それは『信頼されにくい』ということだ。一方記事には信頼性を持ってもらえる」。著者のアル・ライズ、ローラ・ライズはこのように主張します。記者・編集者といった第三者が介在する方が、客観性があるということのようです。しかし、だからといって広告それ自体を否定するのではなく、広告とPRの役割について次のように主張します。曰く、
「最初にPR、次に広告」

新しいブランドを市場に導入したいのならば、最初は信頼性のあるPRによって世の中にブランド名を浸透させ、次に広告で広めろ、というわけです。そしてその反対はダメだと。もっとも、消費者に信頼(支持)されない商品・サービスであれば、PRをいくらやってもダメであることは変わりないとは思いますが。

まあ、本書ではこうした主張を裏付ける事例が豊富に紹介されています。

ところで、この本の主張,まさに正論だと思うのですが、自分の担当しているブランドをうまく記事にしてもらうこと(PR)自体が一番難しいのですよね。私たちの仕事の現場でも、PRの重要性をみんなわかっていても、さてどうしよう? というところでいつも悩んでしまいます。


★アル・ライズ、ローラ・ライズ、共同PR翻訳監修「ブランドは広告でつくれない」(2003年)翔泳社


ブランドは広告でつくれない 広告vsPR

みなさんこんにちは。

仕事柄、広告・マーケティング関連の本は月に何冊も読んでいます。
現在、ある広告代理店の研究部門に勤めていて、新しい情報を得ること自体が仕事の一環だからです。

毎年、似たようなテーマでたくさんの本が出版されます。
厚くて高いわりに内容の薄い本から、普通のビジネス書なのに得るものの多い本まで、まさに玉石混交です。

いろいろな立場で本は読まれるのでしょうが、自分の頭の中の整理と、せっかく集めた情報を、広告(マーケティング)の一線で仕事をしている人たちに役に立てるように提供できればなあ、と考えブログを始めることにしました。

広告代理店や企業のマーケティング部門で働き始めて数年経ち、もっと勉強してみたいと思っているような人を想定して書いてみるつもりです。

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